会計ソフトとスプレッドシートと自動化ツールをつないで、月末の3日仕事を半日に変えた人。本人は「マクロをちょっと書いただけ」と言う。でもその「ちょっと」を、部署の誰も再現できない。
SEC. 00MANIFESTO
世界を使い倒せ
あなたのまわりにも、いるはずです。新しいツールが出ると、まず設定画面を全部開く人。リリースノートを読んでいる人。「それ、こうやると早いよ」と言って、隣の人の30分を3分に変えてしまう人。
その人たちは、どこへ行っても「詳しい人」と呼ばれています。職場でも、家庭でも、趣味の集まりでも、呼び名はそれで終わりです。評価する仕組みも、名乗れる肩書もない。つくる側の専門性には職人、エンジニア、クリエイターという名前があるのに、使う側の専門性は、まだ名前を持っていません。
SuperUsers JP は、その名前をつくるためのコミュニティです。
実在の一人ではありません。でも、どこにでも実在します。
定義の前に、顔を思い浮かべてください。たとえば、こういう人たちです。
家じゅうの家電と照明と共有カレンダーをつないで、家族の毎朝を10分軽くした人。仕組みは今日も静かに動いていて、家族はもう、それが特別なことだったのを覚えていない。
ChatGPT や Claude に、日々の面倒ごとの半分を渡す「渡し方」を設計した人。うまいのはプロンプトではなく、ものごとの分解のしかた。まわりには魔法に見えるが、背後にある試行錯誤の回数は本人しか知らない。
三人に共通するのは、肩書ではありません。道具の手前で立ち止まらず、その向こうの目的まで使い切ってしまうことです。私たちは、こういう人を SuperUser と呼ぶことにしました。
SuperUser は、ユーザーの最上級です。
SuperUser は、プロダクトやツールを深く理解し、自分の目的に合わせて扱い切る人を指す概念です。機能に詳しいだけの人ではありません。仕様を読み、組み合わせ、運用に落とし込み、ときには想定されていなかった使い方を見つけてしまう。ユーザーであることを、突き詰めた人です。
コンピュータの世界では、システムのいちばん深い場所に触れられる者を superuser と呼んできました。私たちはこの言葉を、権限ではなく実力の話として引き継ぎます。root 権限は与えられるものですが、使いこなしは誰にも与えられません。自分で獲得するしかない。世界のいちばん深い設定画面に、自力でたどり着いた人。それがここでいう SuperUser です。
AIが全部やってくれるなら、使いこなしは要らなくなるのか。
正面から答えます。要らなくなりません。むしろ逆です。
ChatGPT や Claude のようなAIは、道具の操作をどんどん肩代わりしていきます。けれどそれは、使いこなす対象が消えたのではなく、一段上に移っただけです。何を任せて、何を任せないか。任せた結果をどう検証するか。AIと他の道具をどうつなぐか。判断の粒度が上がっただけで、やっていることは昔から変わりません。道具の性質を見抜き、目的に合わせて扱い切ることです。
しかも、差は開いています。同じAIを使っているのに、ある人は仕事の半分を渡し、ある人は検索の代わりにしか使えていない。道具が強力になるほど、使い手の差は縮まるどころか拡大していく。使いこなしの専門性がこれほど露骨に成果の差になる時代は、いままでありませんでした。
英語には、12の呼び名がある。
ユーザーとつくり手のあいだに広がる領域に、英語圏は少しずつ違う名前をつけてきました。下の12語はその蓄積で、それぞれが価値の一部を確かに捉えています。
ただ、12語あるということは、どの一語も全体を捉えられなかったということです。深く使う人、先に試す人、使いながらつくる人、伝える人。断片には名前がついたのに、全体を指す一語は、英語にもまだありません。日本語には、訳語すら定着していません。カードの日本語は、私たちが便宜的につけた訳です。
SuperUser という言葉にしても、英語で定着しているのは管理者権限の意味のほうです。「ユーザーの最上級」を指す言葉としては、どの言語にもまだ定着していません。だからこれは、翻訳でも借用でもなく、定義です。12語が別々に捉えてきた価値を一語に束ね、その意味をここから育てる。それが SuperUsers JP の最初の仕事です。
| NO. | TERM | 訳語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 01 | Power User | 高度利用者 | 特定のプロダクトやツールを深く使い込み、高度な機能、細かな設定、複雑な操作まで扱える人。 |
| 02 | Lead User | 先行利用者 | 多くの人が後から直面することを、先に経験している人。まだ一般化していない必要性に気づき、自分なりの解き方を探し始める。 |
| 03 | Prosumer | 生産する消費者 | 受け取る側にいながら、生産や発信にも関わる人。消費と制作の境界を行き来しながら、使う側から何かを生み出す。 |
| 04 | User Innovator | 使う側の発明者 | 自分自身の必要から、既存のプロダクトやツールの使い方を変えたり、新しい仕組みを作ったりする人。 |
| 05 | Citizen Developer | 現場の開発者 | 専門の開発者ではないが、業務や活動のためにアプリ、ワークフロー、自動化、管理画面などを組み立てる人。 |
| 06 | Maker | 組み合わせて作る人 | 既存の技術、プロダクト、素材、ソフトウェアを組み合わせ、自分の手で何かを形にする人。 |
| 07 | Evangelist | 価値を伝える人 | プロダクトや技術の良さを理解し、他の人に伝える人。単なる宣伝ではなく、何が良いのか、どう使えるのかを言葉に変える。 |
| 08 | Developer Advocate | 開発者の接続者 | プロダクト提供者と開発者・ユーザーコミュニティのあいだに立ち、知識、使い方、困りごと、反応を行き来させる人。 |
| 09 | Community Champion | コミュニティの支え手 | 特定のプロダクトや技術の周辺で、質問対応、発信、ドキュメント化などを継続する人。 |
| 10 | Operator | 運用する人 | プロダクトやツールを、実際の現場で回る形に落とし込む人。機能だけでなく、手順、例外、権限、人の動きまで含めて扱う。 |
| 11 | Workflow Designer | 流れを設計する人 | 単体のツールではなく、複数のプロダクト、入力、判断、出力を組み合わせて、作業の流れそのものを設計する人。 |
| 12 | Creative Technologist | 技術で表現を組む人 | 技術と表現のあいだに立ち、プロダクトやツールを使って新しい体験、作品、表現、プロトタイプを組み立てる人。 |
この国は、つくり手の職人性を讃えてきた。次は使い手の番だ。
道具を手入れし、癖を知り、限界まで引き出す。日本はその態度を「職人」と呼んで、何百年も讃えてきました。ただしその敬意は、いつも「つくる側」にだけ向けられてきました。
使い倒すことは、雑に消費することではありません。プロダクトには、つくり手の設計と判断と改善の積み重ねがあります。深く使うことは、その設計を読み、意図を汲み、最後まで応えようとすることです。つくり手への敬意と、使い手の職人性は、同じものの両面です。
つくる人がリスペクトされる時代は、もう来ています。使い切る人がリスペクトされる時代を、ここから始めます。
SuperUser の見分け方
定義を覚えるより、行動で見分けるほうが早い。心当たりを数えてみてください。
手ぶらで来てください。
SuperUsers JP は、Discord から始まります。入って最初に歓迎されるのは、自己紹介でも意気込みでもなく、あなたが最近「使い倒したもの」の話です。設定の発見、組み合わせの発明、AIへの渡し方、うまくいかなかった話。ここでは、それが通貨です。
話すことがなければ、読むだけで構いません。読むだけでも参加です。誰かの使いこなしを眺めているうちに、自分の心当たりが目を覚ます。期待しているのは、その程度の自然な化学反応です。義務は、何もありません。
招待リンクから入るだけ。読む専、歓迎。